欧州を代表する指導者:ルベン・アモリム
マンチェスター・ユナイテッドの新監督就任が決まったルベン・アモリムは、まだ30代という若さでありながら、リスボンでの4シーズンでスポルティングをポルトガルの頂点に導いた。
ダイナミックでチーム重視のシステムを採用する彼は、スポルティングの指導者に抜擢され、リスボンの強豪で大成功を収めた。
現役時代のアモリムはベレネンセス、ベンフィカ、ブラガ、アル・ワクラを渡り歩き、32歳で引退を余儀なくされた。それでも、チャンピオンズリーグではユナイテッドと4度対戦し、うち2度はオールド・トラッフォードでプレーしている。また、ポルトガル代表として2度のワールドカップに出場し、代表でも14試合に出場した。
指導者としての道を歩む決意を固めたアモリムは、下部組織のカーザ・ピアからスタートし、ユナイテッド監督を務めたジョゼ・モウリーニョの指導を受けたこともある。また、北アイルランドのベルファストでUEFA(欧州サッカー連盟)のコーチング資格取得が英語の習得に役立った。
アモリムはブラガに移籍し、リカルド・サ・ピントの後任として指揮を執ると、チームの運命を目覚ましく変えた。2020年初頭にはFCポルトとのタッサ・ダ・リーガ決勝戦を1-0で制して優勝に導いた。
カップ制覇が彼の評価を高めたほか、リーグ戦では9試合中8試合で勝利を収めた。
スポルティングはわずか13試合で彼の資質を確信し、契約解除条項に伴う多額の金銭を支払ってまで彼をリスボンに呼び寄せた。そして、その判断が正しかったと証明された。約20年間、ライバルのベンフィカやポルトにタイトルを奪われ続けていた中で、アモリムは2020-21シーズン、スポルティングを19年ぶりのポルトガルタイトルに導いた。リーグ戦での敗戦は1度だけで、それは歴史的なタイトル獲得がすでに決まった後のことだった。
翌シーズンはリーグ2位に終わるも、UEFAチャンピオンズリーグのベスト16に進出。その後、主力選手を何人か失ったものの、2023年にはヨーロッパリーグでアーセナルをPK戦の末に破った。チーム再建も軌道に乗った昨シーズン、アモリムのスポルティングは2位のベンフィカに10ポイント差をつけて自身2度目、スポルティングにとって20回目となるプリメイラリーガのタイトルを獲得した。
今季はリーグ10戦全勝で得失点差もプラス30と圧倒しており、スポルティングは首位をキープ。この戦績はアモリムが築いた土台の上で成り立っている。
アモリムが指揮を執るようになった2020年3月以降、Optaによればスポルティングはヨーロッパのトップ10リーグで最も高い勝率(77%)を誇っている。そして今、アモリムは新たな挑戦のためオールド・トラッフォードへやって来る。
マンチェスターではマヌエル・ウガルテ再会する。ウガルテは、リスボンで彼が育成に携わった若い才能の一人。彼の薫陶を受けて成長した若手の中には、現在マンチェスター・シティーに所属するマテウス・ヌネス、PSGに所属するヌーノ・メンデス、今夏フルアムからバイエルン・ミュンヘンに移籍したジョアン・パルヒニャなどがいる。
ユナイテッドにはポテンシャルの高い若手選手が揃っている。アモリムの指導により若手がどう成長するのか、当然ながらユナイテッドファンも期待しているはずだ。